嗚呼、歯医者さん

初めて“歯医者さんの数ってコンビニより多い”って聞いた時、心底びっくりしました。

 

普段意識していないだけなのか。意識して町中を歩けば、コンビニよりも多くみつかる?いやいや、そんなこともないでしょ。

 

コンビニエンスストアなんて、下手したら100m置きくらいの間隔でみつけられるのに、それより歯医者さんの方が多いってマジで信じられない…

 

でも、事実、歯医者さんはコンビニより多いらしいんです。コンビニの数は、56,000件である一方、歯科医院の数は約68,000軒もある。2割以上も多いんです!

 

もっと信じられないのは、経営って成り立ってんの?ってこと。一人当たりの客単価は違うとしても、コンビニに比べて、明らかにお客さんの回転率に差があるし、ましてや毎日通うような場所でもない。

 

仮に日本国民の20%(それでも、だいぶ多いけど…)が毎月歯医者に通院するとして、歯科医院1軒あたりの売上シミュレーションは、こんな感じでしょうか。

 

・2,400万人(国民の20%)/68,000軒(歯科医院数)=352人(ひと月あたりの患者数)

・352人(ひと月あたりの患者数)×6,000円(一人当たりの診療報酬(2,000円(自己負担)+4,000円(健康保険)))=約211万円(月間の売上)

・約211万円(ひと月あたりの売上)×12か月=2,532万円(年間の売上)

 

単純計算で、1医院あたり、年間2,532万円の売上。

経費としては、歯科衛生士さん・受付さんの人件費、医院の賃料、設備投資、備品代などが諸々かかると。。。

 

直観として、歯医者さんって儲からないでしょう。

 

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昔は虫歯が多く、社会問題化していたこともあり、歯医者さんはむしろ足りない状況でした。けれど、今は虫歯予防の意識も高まり、家庭でのセルフケア用品も発達してきたため、虫歯自体が減っている。

 

お母さんが赤ちゃんの食べ物を冷ますために一度口に含んで食べさせる、といった習慣も虫歯予防の観点からなくなりました。そういった国民一人一人の意識向上も、歯医者のニーズを小さくしてきたでしょう。

 

こういう状況では、歯医者さんにとって大事なのは、“治療技術”云々以前に、患者さんの囲い込みが最優先課題になります。“立地や診療方針を決めるマーケティング力”だとか、“お年寄りとも世間話やおもてなしで信頼関係をつくれる営業力”など、経営者としての資質が求められる。

 

特に大変だと思うのは、これから開業を考えている若い歯科医師です。

全国どこにいっても、ベテランの歯医者さんが営業網を敷いていて、新規開拓の余地はほぼない。しかも開業医って定年がないので、そういった地盤が40年、50年も続いていく。

 

診察の経験も施設にかけられるコストも小さい歯医者の卵が市場を開拓するには、まずは地域を牛耳ってる歯科医院に勤務医として働いて、院長先生にかわいがってもらいながら、地元のお客さんたちと少しずつつながりをつくっていく。

 

そんな地道な草の根活動を続けていくほか方法がない。もはや政治家と一緒だよ…

 

矯正歯科やインプラントなど、自由に料金を設定できる保険診療外の治療法を取り入れるという方法もあるけど、それだってすでにレッドオーシャンです。

 

ちなみに、平均年収は、562万円だそうですが、あくまで平均であって、勝ち組負け組がはっきりしているのは容易に想像がつきます。業界内における、年収の統計的ばらつきはかなり大きいでしょう。

 

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歯医者さんのように、コンビニよりも店舗数が多い業界ってほかにあるのか?

 

代表的なのは、美容室です。

美容院の件数は約240,000軒!なんと、歯医者の約3.6倍にものぼります。

 

歯科医師に比べて、需要は多い(髪は伸びますからね)ものの、当然保険診療なんてものはないし、客単価は低い。それに、歯医者のように規制に守られているわけでもなく、格安カットチェーンといった強力な新規参入と戦わなくてはならない。

 

この業界も、カットの技術だけでなく、SNSでの情報発信や、顧客とのコミュニケーションなど、人気取りのための努力は必須といえそうです。

 

ほんと、世の中どんな仕事も甘くないですね。

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