国語の問題

偶然、ネットで国語の問題をみかけました。問題の中身はこんな感じです。

 

【問題】

「叔父が海外に行く」「私は父と見送りに行った」「急いで見送りに行った」という内容を一文で表したとき、解釈をする上で誤解の生じないものはどれか。

 

ア 父と私は急いで海外に行く叔父を見送りに行った。

イ 父と私は海外に行く叔父を急いで見送りに行った。

ウ 私は父と海外に行く叔父を急いで見送りに行った。

エ 私は父と急いで海外に行く叔父を見送りに行った。

 

*****

正解が“イ”だってことは、なんとなくわかります。けど、なんとなくなんです。なんで答えられるのかっていったら、長年の日本語生活で培った感覚だとか、経験としかいいようがない。

 

子どもから「どうやって解けばいいの」って聞かれたら、みなさんならどう答えますか? 宗一郎なりに考えてみました。

 

まず、不正解の文章の誤りの箇所を確認します。

 

[正解]

イ 父と私は海外に行く叔父を急いで見送りに行った。

 

[不正解]

ア 父と私は急いで海外に行く叔父を見送りに行った。

急いで“海外に行く”or“見送りに行く”のどちらとも取れる

 

ウ 私は父と海外に行く叔父を急いで見送りに行った。

父と“海外に行く”or“見送りに行く”のどちらとも取れる

 

エ 私は父と急いで海外に行く叔父を見送りに行った。

急いで“海外に行く”or“見送りに行く”のどちらとも取れる

父と“海外に行く”or“見送りに行く”のどちらとも取れる

(設問エについては、設問アとウの合わせ技のような感じですね。)

 

今回の問題は、“父と”と“急いで”それぞれの置き場所が論点になります。

 

まず、ひとつめの“父と”について。

“と”という言葉は、なにかと一緒だとか、同じという並列の関係を意味します。

そこで、“父と”が入る位置と、それに呼応して並列となり得る単語のパターンを確認してみます。

 

                                    並列となり得る単語

父と私は海外に行く叔父を急いで見送りに行った。 ⇒ 私

②私は父と海外に行く叔父を急いで見送りに行った。 ⇒ 私 or 叔父 

③私は海外に行く父と叔父を急いで見送りに行った。 ⇒ 叔父

④私は海外に行く叔父を父と急いで見送りに行った。 ⇒ 私

⑤私は海外に行く叔父を急いで父と見送りに行った。 ⇒ 私

⑥私は海外に行く叔父を急いで見送りに父と行った。 ⇒ 私

⑦私は海外に行く叔父を急いで見送りに行った父と。 ⇒ 私

 

結果として、②と③のみ、父は叔父と海外にいってしまう可能性があります。④に至っては、確実に父は海外にいってしまう。

 

②と③の特徴はなんでしょう?

まず、“父と”が、叔父よりも前に置かれている。ってことがありそうです。

 

①も“父と”が、叔父よりも前に置かれています。

けれど、②③との違いは、“父と”が主語(私は)に入っていて、述語(海外に行く~)とは区別されていること。なので意味が途切れ、叔父と海外に行く可能性がなくなった、といえそうです。

 

また、③の文章で、もし“海外に行く”という文言がないと、どうなるか。

「私は父と叔父を急いで見送りに行った。」となり、並列となり得る単語に“叔父”だけでなく“私”もでてくる。よって、確実に海外に行くとみられていた父が、私と見送りに行く可能性が浮上してきます。

 

これらをまとめるとこんな感じです。

 

[確実に父が海外に行ってしまうパターン]

“父と”が叔父よりも前にある & (“海外に行く”などの)“父と”をさらに修飾する言葉がある

 

[絶対に父が海外に行かないパターン]

“父と”が叔父よりも後ろにある or 叔父のいる述語から離れて、私のいる主語に入る

 

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次に、ふたつめの“急いで”について。

これも“急いで”が入りうる位置と、修飾され得る言葉のパターンをみてみます。

 

                                    修飾され得る言葉

急いで父と私は海外に行く叔父を見送りに行った。 ⇒ 見送りに行った

②父と私は急いで海外に行く叔父を見送りに行った。 ⇒ 海外に行く or 見送りに行った

③父と私は海外に急いで行く叔父を見送りに行った。 ⇒ 海外に行く

④父と私は海外に行く叔父を急いで見送りに行った。 ⇒ 見送りに行った

⑤父と私は海外に行く叔父を見送りに急いで行った。 ⇒ 見送りに行った

 

偶然でしょうか、“父と”と似たような結果になりました。

 

②と③だけ、“急いで”が“海外に行く”にかかる可能性があり、③では“海外に行く”の一択です。

 

“父と”と同様に、“海外に行く”よりも前にある。けれど、①のように、“急いで”が主語(父と私は)にあると、述語にある“海外に行く”は修飾されない。

 

③で、仮に“海外に”という文言を消す(父と私は急いで行く叔父を見送りに行った。)と、修飾され得る言葉が、“海外に行く”だけでなく、“見送りに行く”の可能性がでてくる点も同じです。

 

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この手の問題。つまり、“父と”だとか、“急いで”などの修飾語の位置によって、修飾される単語を考える問題には、なんらか共通の法則がありそうです。

 

それは、

1.修飾語(A)は、原則修飾される言葉(B)の前に入る

2.ただし、修飾される言葉(B)が主語に含まれている場合は、その限りではない

3.修飾語(A)をさらに修飾する言葉(C)がつくと、修飾される言葉(B)は、修飾語(A)の直後の単語に限定される。

ということ。

 

 

むずっ!どこの子どもがこんなややこしい解説に耳を傾けてくれんねん!

この問題、市販の解説とかって、どんなことが書かれてるんだろう。めっちゃ見てみたい。

 

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日本語を勉強している大人の外国人って、耳とか音からではなく、こういった理論から学んでいってるってことなんだと思います。そりゃあ、時間もかかるし、途中で挫折する人も多そう。

 

そして、同じように英語を理論(文法)から学んでいる我々日本人も…(以下略)

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