企業は学生を理解できてる?

宗一郎は、企業に勤めていたころ、毎年面接官として新卒の採用活動に関わっていました。面接またはグループディスカッションの対応です。

 

集団面接ともなると、面接官1人に対して3人の学生の自己PRやら志望動機やらを同時に聞いて、メモして、合否を決めるといったプロセスを30分単位で進めます。1日で合計10組ほど終えた時には、へとへとで記憶がないくらいでした…

 

大卒の就職活動の大まかな流れは、エントリーシート→集団面接(orグループディスカッション)→個人面接→内々定で、どの企業でもだいたい同じような感じだと思います。宗一郎が学生だった2000年代後半から現在まで、選考プロセスは大きく変わっていません。

 

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大卒社会人の3年以内離職率は、ここ15年間ほどは25~35%あたりを推移しており、際立って改善も悪化もしてない状況です。

(コロナの影響で転職活動が活発でないこともあり、2018年3月卒社会人の3年以内離職率は31.2%と、前年に比べて若干改善しました。)

 

職歴が長いベテラン社員は、公私にわたる変化(昇進、転勤、結婚、出産など)によって、退職する理由もそれなりに多様になります。

 

一方で、入社してそれほど時間が経っていない若手社員の場合、採用時点の学生と企業の相互理解ができていれば、退職を避けられたケースも少なくありません。

いわば、若手社員の離職は、採用活動の成否と相関関係が強いといえるでしょう。

 

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最近企業が力を入れている採用活動は、インターンシップによる入社前の仕事体験や選考時点で職種を保証する制度、SNSを活用した企業紹介などです。

 

これらの施策の主目的は、「こんなはずじゃなかった!」といった入社後の若手社員の失望(ミスマッチング)を防ぐためです。また、いかに優秀な学生に集まってもらうか(応募してもらうか)、という母集団形成(魅力のアピール)のためでもあります。

 

つまり、企業は採用活動(=離職を防ぐ)の課題は、“学生側の企業理解の不足”であると考えているということです。

 

これは確かに大切です。そもそも学生に選ばれなければ(応募)、企業が学生を選べない(選考)わけですし。

 

けれど、別の観点で変えるべきでは? と宗一郎が感じるものがあります。

 

それは“企業側の学生理解(見極め)”です。

具体的には選考プロセスにあたりますが、これ自体、“学生側の企業理解の向上”の取り組みに比べると、前述の通り過去から大きく変わっていません。

 

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ほとんどの企業が内々定をだす最後の選考プロセスとして面接を行います。

たしかに面接は、その企業にふさわしい人物なのかを、学生の雰囲気や相性を含めて最終確認する場としてふさわしいでしょう。

 

けれど宗一郎は、エントリーシートや30~60分程度の面接“だけ”をもって、合否を決めていることにどうしても違和感をもってしまいます。

 

この違和感の正体ってなんなのか?

 

それは、選考の内容が、“学生の表現力”に頼りすぎってことではないかと思います。

 

選考プロセスの中心である、エントリーシートの記述内容や、面接での回答内容は、あくまで学生の“自己申告”にもとづいて進められ、企業はその内容についてあとで確認したり、裏をとるといったことはしません。

 

そのため、表現力の高い(悪い言い方をすれば、口のうまい)学生が圧倒的に有利な仕組みとなっています。場合によっては、企業側が学生の虚偽の発言を見抜けないこともあるでしょう。

 

表現力は、社会人として必要なスキルであり、十分評価して問題ないではないか?という意見もあります。

 

確かにそうですが、面接での表現力が高い人(口のうまさ)ばかりが過大に評価され、本来その企業で活躍できる能力が十分あるのに、表現力が足りなかったという理由だけで、優秀な学生を逃してしまうリスクもあります。

 

学生に求める資質として、多くの企業がコミュニケーション能力を挙げています。

面接で測れるコミュニケーション能力は、“その場で理路整然と答えられる能力”であって、実際に仕事で求められるような“(たとえ朴訥であっても)信頼関係を築く能力”“相手の気持ちを汲んでそれに応える能力”など、本来評価すべきスキルとは似て非なるものでしょう。

 

つまり、口下手だけど、着実に成果を出す学生が救われないのでは?って思うわけです。

 

宗一郎の過去の経験では、自己PRの約8割が、バイトor部活orゼミのリーダー経験であり、面接では“なぜ?”を問い続ける深堀質問で学生の本質に迫ろうとしますが、それでも限界はあります。

 

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なので、“学生の頑張り(実績)“を客観的に評価できる仕組みがあってもいいのでは?と思います。

 

例えば、体育会で活躍した学生であれば、部活の顧問に、(組織としてではなく)学生個人があげた実績や、長所・短所などを記載したレポートをつくる。発信活動に力を入れた学生であれば、ブログやツイッターの内容、フォロー数などがわかる資料を提出するなど。

 

形式はなんでもいいので、このような学生時代の“実績のエビデンス”を提出してもらいます。(形式って、回数を重ねていけば洗練されていくものだから)

 

アメリカでは、採用を考えている会社が、応募者の前職での実績や勤務状況に偽りがないかを、一緒に働いたことのある同僚や上司に確認するリファレンスチェックという調査が一般的です。

 

面接の場で自分をうまく表現してアピールできる力は大切です。ただ、それ以上に重要なのは、試行錯誤しながらも、毎日地道に継続し、実績をつくる力。これこそが長い長い社会人人生を歩む上で必須といえるでしょう。

 

企業がより多面的な角度から、学生を正しく評価できる仕組みができればいいなと思います。

 

まぁ、宗一郎自身がそんなに口がうまい方ではなかったので、半分願望も入ってるんですけどね…

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